つぐない

先日はフランス映画だったが、今日はイギリス映画を紹介。
現在、公開中の『つぐない』
これも実に雰囲気のある映画。
文芸作品を上手に映像化している。監督、ジョー・ライト


先日の『譜めくりの女』が、
少女時代に受けた苦い思いを、大人になってお返しする話であったのに対し、
この『つぐない』は、少女時代に自分の勘違いから
自分の最も身近で愛する人間を悲惨な運命に導いてしまったお話。


1930年のイギリスの田舎の、大きな屋敷から映画は始まる。
そこに生活する姉妹と、使用人の息子が主要な登場人物。
姉とその使用人の息子は、ほぼ同年代で20代前半、妹は13才。
妹は小説や脚本を書くのが好きで(老いて後の場面では、
ベテラン作家として登場する)、密かに使用人の息子を思慕している。
一方、姉と使用人の息子は、身分の違いを感じながら、
実は愛し合っていたことに気づく。
ところが、妹が、二人の愛する姿を目撃することで……


そこからは悲劇が続く。
引き裂かれた姉と使用人の息子、
自分のやったことへの、罪の意識がずっとのしかかる妹、
第二次大戦を背景に、三人の人生は変転する。


何かぼやっとしたあらすじの書き方しかできなかったが、
やはりご自分で鑑賞するのが一番だと思う。
話の内容も面白いし、映像のメリハリがとてもきいている。
中でもダンケルクのシーンは印象的。
そのシーンでも使われていたが、
移動シーンをわざと長めに撮り、その間に次に何が出てくるのかという
観客の興味を増幅させていく手法を、随所で上手く使っていた。
色の使い方も、見事なものである。


またもう一つ特筆すべきなのは、時間軸を巧みに操る技術である。
結構、時間が行ったり来たりして、本来なら見ている側が
混乱するのを、決してそうはさせない。
そして、一場面だけ、あれっと思うシーンがあるが、
それは、混乱でなく、監督の作為であり……
とにかく、お上手。


キーラ・ナイトレイパイレーツ・オブ・カリビアンのヒロイン)が姉役で、
まあどえらく美しく、彼女と男との恋愛物語が主な要素を占めるが、
個人的には妹役の存在が大きく見えた。
実際、監督は当初、キーラ・ナイトレイに妹役をオファーしたが、
彼女が姉役を希望したらしい。
映画の中で妹役は、13才時、18才時、そして死を目前にした時と
三度変わるが(最後に演じるのはヴァネッサ・レッドグレーヴ)、
三人が三人とも達者な演技で、それも大きな見所だ。


このところ当たり映画が続いている。
ありがたいことである。


次は『相棒 劇場版』かな。
今日も昼間、宣伝番組やってたしな。