評決

評決

先日、ポール・ニューマンが亡くなった。
自分が映画を本気で見始めた頃には、
もう大スターで、中年になっていたが
ほんまに、まあ、えらいかっこいい人だった。
最初に見たのは、テレビでの放送だったと思う。
(おそらく「暴力脱獄 」)
公開同時に見に行った最初の作品となると、
確か「アパッチ砦 ブロンクス」だった。
あえて言うまでもないが
明日に向って撃て! 」にしびれたし、
スティング」は今もって最高のドンデン返しだと思うし、
ハスラー 2」の時は、ナインボールに明け暮れて
しまいには真似して眼鏡を作った……


頭に焼き付いたシーンも数多い。
「暴力脱獄」でゆで玉子食い競争をして腹がぼこっと出たシーン、
動く標的」のオープニングでコーヒーのペーパーフィルターがきれてしまい、
ゴミ箱に捨ててあったのをそっと拾い上げて使うシーン、
等々書き出したらきりがない。


で、「評決」である。
実は、お恥ずかしい限りで、この映画はなぜか見逃していて、
十年ほど前に人に教えられてはじめて見た映画。
で、今では、彼の作品の中でも一番好きなものになっている。


いわゆる法廷もの。
かつては新進の期待された弁護士であった主人公は、
ある事件をきっかけに身を持ち崩し、
今は昼間から酒浸りで仕事もほとんど無い。
見かねた友人弁護士が持って来た仕事が、
医療ミスで植物状態になった女性の事件。
依頼してきた被害者の姉夫婦の主張通り、
最初は少しでも多くの和解金を得ようと主人公は動くが
途中から、本気で、大病院とそこに雇われた敏腕弁護士を相手に、
医療裁判を戦っていく。


途中何度もくじけそうになり、さらにそこへ恋愛がからんできて
時間を忘れさせてくれる。
と同時に、監督がシドニー・ルメットであることからもおわかりのように
大病院や法廷の内幕を痛烈に描いた一級の社会派でもある。


印象に残るシーンも多い。
中でも、植物状態の女性が眠る病室へ行って
主人公が裁判に必要な写真を撮るシーン。
最初はただ仕事として女性にカメラを向けていたが
やがて変わり果てた女性の姿が、主人公の心に火をつけるシーンは圧巻。
台詞はほとんど無く、目と表情だけで、ニューマンはそれを表現していた。


他の出演者も素晴らしい。
シャーロット・ランプリング、ジェームズ・メイソン、
ジャック・ウォーデン、リンゼイ・クローズと並ぶ。


これだけ読んでも、おそらく良さが伝わらないかも知れない。
ハリウッドには、よくある作品じゃないかと思う人もいるだろう。
そういう方も、一度、ご覧になっていただければと思います。


合掌。