休暇

また、また久々になってしまった、って、もう何回目か。


映画「休暇」を見る。原作は故吉村昭氏の同名小説。
中年の刑務官が、六才の男の子を連れた女性と結婚することになった。
ちょうどその頃、ある死刑囚の執行命令が出た。
死刑執行時「支え役」を務めた者は一週間の休暇が貰える。
主人公は、親子で新婚旅行に出かける為に、「支え役」を志願する。


映画は、死刑執行までの死刑囚や勤務時の刑務官たちの場面と、
新婚旅行先での主人公と妻や子供との話が、並行して描かれる。
時間軸がばらばらであるが、全く混乱することはない。
子供がなかなかなじんでくれないシーンも明るいわけではないが
それでも小さな幸せをつかもうとする主人公の気持ちが見えてくるのに対し、
死刑囚の出てくるシーンは、当然だが暗く、重く、最後の執行シーンまで
救いが無い。


それ以上に感じたのが、執行する刑務官たちの精神的負担が
余りにも大きすぎるということである。
人間の仕事として、想像以上に過酷であることがよく分かった。
主人公と男の子が旅行先でだんだんと気持ちを通わせていくかに見える
場面から、急に死刑囚の独房に切り替わると、気持ちが重く戻される。
主人公の胸の内をそうやって観客に疑似体験させているようだ。


全編を通して、台詞が極端に少なく、淡々とただ克明に描かれた場面が続き、
とても緻密に、そしてリアルに刑務所内が描かれ、決して間延びせず、
見ている側にはとても分かりやすく進んで行く。
監督、及びキャストやスタッフの力であろう。


途中、何度も心に残るシーンがあった。
死刑囚と妹の面会、及びその後の妹のシーンは、画面に見入ってしまったし、
運動の時間の場面も胸を打つ。
そして執行シーンでは、こちらまで厳粛な気持ちにさせられた。


主役の小林薫さん以下皆さん素晴らしい。
死刑囚役の西島秀俊さん(巧いです)と妻役の大塚寧々さんが、それぞれ、
並行する二つのストーリーの色づけ役を果たしていた。


死刑制度、そして実際にそれに関わる刑務官やその他の人々、
更には人間の命まで考えさせられる映画である。


どんな意見を持つかは人それぞれだが、一見の価値はあると思う。