『なにわ春風堂』を書いて

新刊『なにわ春風堂』は江戸時代の大坂が舞台であり、
そのような時代小説は江戸舞台のものに比べて少ないことは
前回の記事でも書きました。


大浪花別嬪番付―なにわの源蔵事件帳〈1〉 (小学館文庫)
ただ数は少なくても、名作はいくつもあります。
その中でも故有明夏夫氏の『大浪花別嬪番付』
(なにわの源蔵事件帳1)は格別の面白さがあります。
この文庫本は直木賞受賞作『大浪花諸人往来』を、
最近復刊したもので、以降もこのシリーズが復活していく
とのことでとても楽しみにしています。
海坊主の親方ことなにわの源蔵シリーズは過去に、故桂枝雀さん主演で
NHKにてドラマ化されたこともあり、ご存じの方も多いでしょう。


正確に言うと、舞台は大阪ですが、時代は明治のはじめ。
明治新政府となり、文明開化の時代ですが、
まだまだ江戸時代のにおいを残す大阪の町を、
元目明かしの源蔵が駆け回り、様々な事件を解決する話です。
事件の内容もいかにも当時をしのばせるようなものばかりで
何とも味わいがあります。
そして事件を追いながら、源蔵たちが出会う新しい文明や
逆に古い事物など、どれもが興味をひいて飽きさせません。
当時の大阪が鮮明に頭の中に描かれる思いです。


解説によると、純然たる捕物帳が直木賞に選ばれたのは
現在までこの作品だけとのこと。


『なにわ春風堂』が少しでも近づけたらと、
夢だけは大きくなっています。。