ノーカントリー

次は『相棒 劇場版』かと書いたが、
本日、時間が空いて、そのまま飛び込んだのが『ノーカントリー』。
ご存じのように、一昨日書いた『つぐない』などを押し退けて
先日のアカデミー賞で、作品賞、助演男優賞、監督賞、脚色賞に輝いた作品。
コーエン兄弟が監督、原題は『NO COUNTRY FOR OLD MEN』。


コーエン兄弟といえば、『ファーゴ』が代表作であり、
そんな感じの映画かと思ったが、こっちはもっと凄まじい。
時は1980年、
麻薬がらみのやばい金200万ドルを、偶然手に入れた男は金と一緒に逃亡する。
組織から男を追うように頼まれた殺し屋が追跡、
それを知った老保安官(トミー・リー・ジョーンズ)は何とか男を助けようと思う。
といったストーリーだが、そこに現代の闇が浮かんでくる。


この映画を見た大半の人が言ってるように
ハビエル・バルデム演じる殺し屋の存在感が巨大過ぎる。
とにかく怖い、顔も、服装も、髪型も、持ち物も、すべて。
無表情で、考えが読み取れず、人を撃つのに躊躇がない。
あんなガス銃持たせるなと叫びたくなったし、
絶対、こんな人と出会いたくないと震えさせてくれる。
本物でなく演技であることは分かっているのに、それでも思ってしまう。
助演男優賞は、もう大納得。


『ファーゴ』でも妊娠した女性保安官が口にしていたが、
「何でそんなことをするのか」と一般人が首を振ってしまう残酷な犯罪。
しかし、そういう世の中になって行くのは、もう誰にも止められない
そんな意味の台詞が、老保安官やその周囲の人の口から何度か出る。
舞台になっているのが1980年というのも、象徴的で、
つまりこの映画よりも、今はもっとひどくなっていると暗示している。
その頃から、常人では計り知れない殺人などが横行し始めて、
今となっては、もはや為す術などなしとでも言いたいのだろうか。
背筋が寒くなる。


しかもこれはもうアメリカだけでなく、日本もすでにと思わせる事件が多い。
そうなると、原題が、恐ろしい響きを持ってくる。
『NO COUNTRY FOR OLD MEN』
老人大国なのに。


など、鑑賞後に色々と考えさせてくれた映画。
こういう映画にアカデミー賞を与えるのは、流石と言えば流石である。


ウディ・ハレルソンも出ていた。
彼には、もうちょっと、何かさせて欲しかったな〜。