偽のデュー警部

以前苦言を呈された方から、また同じ苦言を頂いた。
「本の話が、なくなっとるぞ」
「仰せの通りで、ございます」


ということで『偽のデュー警部』である。
「おい、おい」「安易な選択」「有名過ぎるわ」「何を今更」とのご意見があろう。
お読みになった方も、大勢いるだろう。
映画で言えば「スターウォーズ」や「タイタニック」をご紹介します
といった感じになるかも知れない。
実は、その「タイタニック」である。
先日、再放送され、またこの所の飲み会などで、何度か話題に上った。
で、ふと、考えた。
ヒットするには、豪華客船のロマンスとミステリーの融合、、、と単純な発想
で、最初に浮かんだのが、この作品。


ピーター・ラヴゼイ作で、原題はThe False Inspector Dew。
1982年の作品だが、1920年代を舞台にしているので、
時代ミステリーに他ならない。
タイタニック号やルシタニア号の悲劇の少し後。
ちょっと見直そうと思って、今ぱらぱらとめくっていたが、つい読んでしまう。
恋愛小説であり、ミステリであり、時代物の側面も持つ。
奇抜過ぎるプロットがベースになっているが(題名で分かる)
それに頼りすぎず、次々に意外な展開を持ち出してくる。
その上何組かの恋愛とその過程を描き、かつ、ユーモアもたっぷり。
ミステリ的には一組の男女が幸せになる為に…という話であるが、
その計画も、ロマンスも、とにかく転がる、転がる。
最後まで話が分からない。


初読時は、セレブの船上での優雅な生活やロマンスに、はーと唸っていた。
まあ、まさに「タイタニック」の世界。それにプラス英国ミステリ。
ありきたりだが、自分が船に乗りながら、事件を見ているような気分。
表題になっているデュー警部他、実在した人物や、
実際にあった事件がとても上手くリンクしている。
(こう書いていると、だんだん己が情けなくなってきた……)


この文庫本の表紙、とても好きです。
でも、出てないな。