判事の家

判事の家
三月二日三月二十一日付の記事で、
『冤罪』『死刑』『裁判』などをテーマにした作品を書いたが、
その流れの一連としてこの本を紹介します。


『判事の家』は下山、三鷹事件と並び、戦後最大のミステリと
される1949年に起きた松川事件をベースにした小説。
一審、二審で死刑を宣告された容疑者達が、
その後の裁判で無罪を勝ち取る中、
最後まで死刑・有罪を主張したひとりの実在の裁判官が
死を前にして死刑廃止論者になった。
その理由を現代に生きる孫が、追いかけていく小説。


松川事件に関してほとんど予備知識のない方も(自分もでした)
孫の物語と並行して、事件の概要、その後の裁判の進展などが
詳細に記述されているので、問題なく読み進められる。
それと警察官、検事、弁護士などと比べると、
あまり知られていない判事の日々が書かれていて興味深かった。


それでもボクはやってない』や『相棒Ⅵ最終回 黙示録』
とは時代背景、政治状態、社会状況などまるで違っているが、
冤罪によって死刑宣告された人がいたという歴史事実は
その二作以上に重くのしかかる。


筆者の橘かがりさんは、長い間こつこつと調査した上で本書を上梓された。
その辺りの詳しい経過は、ご本人のブログで連載中。
興味のある方は、ご覧下さい。


松川事件って何? 若い方にはそういう人も多いだろう。
しかし一読することによって、
今もって未解決大事件という謎……
その裏でこんなことが起こっていたのかと驚くだろう。