目指すおもろいもの 「日本一の商人 茜屋清兵衛奮闘記」③

では、今度の「日本一の商人 茜屋清兵衛奮闘記」では、どんなおもろさを目指したか。作家なら、誰でもそうでしょうが、オリジナリティを追求します。従ってどんな作品、どんな作家を目指すかという時点で矛楯するように感じられるかも知れません。しかし、別に同じような作品を書くという訳では無く、場所というか、存在位置に関しての話をしています。

「うだうだはええから、結論を言わんかい」という声が聞こえてきます。

これは編集者の方との話の中で出てきたのですが、ずばり井原西鶴です。「おい、おい、大物言うのも大概にしとけよ」「体調悪いんか」の声が聞こえてきますが、本人至って正気です。別に西鶴のような歴史に残る作家になると言ってるのではありません(もちろん、そうなれば幸いですが)。ただ、他の作家を全く寄せ付けない圧倒的な独創性で、庶民の生活、商売、男女のことなどを描ききった西鶴、そんな風に書ければどんなに素晴らしいでしょう。町人を中心に、たとえ武士が出てきても、みな人間臭い登場人物と物語。そういうものが書ける存在を目指すということです。

更に、もうひとつ、いや、ひとかた、いや、ふたかた、目指す存在があります。これは、まさに目指すという言葉がぴったりで、あまりに遠い存在ですが、海原やすよ・ともこ、通称やすともです。言わずと知れた超人気漫才コンビですが、とにかく、小説中で、あの笑いに少しでも近づきたいのです。「そんなのお前には無理」「あんなセンスがあるわけない」との言葉はごもっともです。でも、あの「やすとも」の笑いが一瞬でもできたらと、願ってやみません。

以上、三回にわたって、「日本一の商人 茜屋清兵衛奮闘記」刊行にあたっての思うところを書いてきました。まずは、この三回で何がやりたいのかを書きました。最後まで。お読みいただきました方、感謝いたします。

もちろん、まだまだ、新刊については書いていきます。どうぞよろしくお願いいたします。